地上共振【ヘリコプターの危険な空力シリーズ】

出典:Helicopter Flying Handbook
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ヘリコプターの危険な空力シリーズ、今回は「地上共振」です。

地上と共振って何だか意味わかりませんよね。

いまいち理解できていない方も安心して下さい。

今回もわかりやすく説明していきます。

  • 地上共振とは何なのか
  • 地上共振はなぜ起きるのか
  • 地上共振になりやすい状況
  • 地上共振からの回復方法

を解説していきます。

目次

地上共振とは?

地上共振を英語で言うと「Ground Resonance」と言います。

Ground:地面
Resonance:共振、共鳴

地上共振については「耐空性審査要領」に定義が載っていますのでご紹介します。

「地上共振」とは、回転翼航空機が接地しているとき空中に生ずる力学的不安定振動をいう。

「力学的不安定振動」とは、回転異航空機が地上又は空中にあるとき、回転翼と機体構造部分との相互作用によって生ずる不安定な共振状態をいう。

耐空性審査要領の定義にもあるように、この現象はヘリコプターが接地しているときに発生します。飛行中は起こりません。

定義の文ではいまいちわかりにくいので、もう少し簡単に地上共振を説明すると、

地上共振とは?

メインローターの位相がずれることにより発生する振動と機体の降着装置の振動が共振し、お互いの振動を増幅させ最終的には機体を破壊させるほどになる。

半関節型や無関節型のローターシステムでは発生しない。

メインローターの振動だけではなく機体降着装置の振動も関与していることがポイントです。

共振することで単なる振動が機体を破壊するほどのエネルギーを持ってしまいます。

地上共振が起きる原因

家庭にある洗濯機で洋服を脱水しているとき、振動が大きくなり洗濯機が揺れているのをみた事がありますか?

衣服が偏って洗濯槽の重心位置が偏ることで大きな振動が発生します。

まさにあれと同じことがヘリコプターでも起こっています。

ドラッグヒンジやダンパーを有しているメインローターシステムでは、それぞれのブレードが個々にドラッキングすることができます。

このドラッキングによりブレード間の位相が不均一になると、メインローターの重心位置が偏り振動が発生します。

ブレードが3枚以上の機体で起きる

最初に知っておいてもらいたいのは、地上共振は3枚ブレード以上の機体で発生します。

2枚ブレードの機体では起きません。

地上共振の発生にはブレード同士の位相のズレによるメインローターの振動が原因の一つです。

通常3枚以上のブレードを有するメインローターは、ブレードの前後の動きを受け持つドラッグヒンジがあります。

このヒンジがあることで、それぞれのブレードが個々にドラッキングすることができます。

このドラッキングによりブレード間の位相が不均一になると、メインローターの重心位置が回転軸から外れ振動が発生します。

2枚ブレードのヘリコプターの多くはセミリジットローターシステムでドラッグヒンジがありません。

ブレード同士の位相は常に180°であるためローターの重心が回転軸からずれる事がないのです。

従って地上共振は2枚ブレードの機体では起きず、3枚以上のブレード有する機体で発生します。

ブレードの位相のずれ
出典:Helicopter Flying Handbook

ローターと降着装置で振動が増幅する

地上共振の最大の特徴はメインローターと降着装置の相互作用でどんどん振動が大きくなる事です。

ヘリコプターが接地する場合や接地状態にある場合、降着装置は動きが制限されていることになります。

降着装置が受けた衝撃や振動は機体を通ってメインローターまで伝わります。

この伝わった振動によりブレードの位相がずれてメインローターにも振動が発生します。

そしてこの振動が降着装置まで伝わって振動はさらに大きくなりまたメインローターに伝わります。

この振動の往復を何度も繰り返す(共振)することで、機体を破壊するほどの大きな振動になってしまうのです。

地上共振が起きやすい状況

3枚ブレード以上のヘリコプターには地上共振はつきものなので、機体を作る段階で各メーカーは様々な防止策を講じています。

しかしながらこれらの防止策が不具合を起こしたりした場合には、通常の運航であっても地上共振は起きてしまいます。

地上共振発生のリスクが高い場面はどのようなときでしょうか。

強めの接地

ボバリングから地面に設置するとき、降着装置に強い衝撃を与えてしまうと地上共振のリスクが高まります。

降着装置が受けた振動がメインローターに伝わり、ブレード間の位相が不均一になる可能性があります。

ホイールタイプのヘリは起きやすい

一般的にスキッドタイプよりもホイールタイプの方が地上共振が起きやすいと言われています。

なぜかというとホイールの空気圧によって左右に差が生じやすいからです。

タイヤの空気圧が適正でない場合や左右で差がある場合は、振動が大きくなりやすく地上共振のリスクが高まります。

ホイールタイプの機体(CH-47)

地上共振の回復方法

地上共振の回復方法はメインローターの回転数によって2パターンあります。

アイドルの時

暖機運転中や着陸後の冷気運転中などのローターの回転数が低いとき(浮き上がれないとき)の回復方法です。

回復方法(アイドルの時)

直ちにスロットルを閉じコレクティブを最低位置にする。

低回転数の状態ではスロットルを絞ってエンジンを切るしか方法はありません。

激しい振動を感じたら慌てずにエンジンを切りましょう。

常用回転数の時

離陸直前や接地直後のローターの回転数が常用回転数の時(すぐに浮き上がれる)の回復方法です。

回復方法(常用回転数)

直ちに離陸する

地上共振の振動は浮き上がってしまえばおさまります。

すぐに浮き上がれる状態であれば浮き上がってしまいましょう。

参考

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