ヘリコプターパイロットのライセンスを解説(実はけっこう細かい)

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ヘリコプターも車と一緒で操縦するためには免許が必要です。

飛行機やヘリコプターなどの航空機の世界では免許のことを「技能証明」と言います。

操縦できる「技能」を「証明」するというもので「免許」よりも直接的な感じがしますよね。

まあ実際には皆んな「ライセンス」と言ったりしてるのでここでも「ライセンス」を使います。

ヘリコプターや飛行機などの航空機のライセンスは結構複雑です。

車の免許にも普通、中型、大型などの限定がありますよね。

さらにタクシーやバスの運転手になるためには2種免許を取らなければなりません。

ヘリコプターも同じで限定事項やできる業務範囲がライセンスごとに分かれています。

「ヘリコプターにライセンスが必要なのはイメージできるけど、具体的にはどんな免許があるの?」

「ライセンスのとる順番は?」などなど色々わからないこともあると思います。

実際にライセンスを取ってきた私が、そんなヘリコプターのライセンスの仕組みについて解説していきます。

この記事を読めばヘリコプターのライセンスの仕組みが理解でき、取るイメージがつくと思います!

目次

航空機の種類によってライセンスは違う

まず初めに知っておいてもらいたいことがあります。

それは航空機の種類によってライセンスは違うと言うことです。

航空機の種類には

  • 飛行機
  • 回転翼航空機(ヘリコプター)
  • 滑空機
  • 飛行船

がありますがそれぞれライセンスは違います。

飛行機のライセンスを持っていてもヘリコプターには乗れませんし逆も然りですね。

飛行機と滑空機は似ていますがライセンスはまた別になります。

共通点は空を飛べることぐらいでそれぞれ違う乗り物ですからね。

業務範囲による違い

まずは業務範囲の違いを見ていきましょう。

ヘリコプターパイロットのライセンスを業務範囲別に分けると以下の3つになります。

ヘリコプターのライセンス(業務範囲別)

・自家用操縦士

・事業用操縦士

・定期運送用操縦士

車で言うところの1種免許か2種免許かの違いです。

取得の順番としては上から順に取っていくことになります。

それぞれどんな違いがあるのか見ていきましょう。

自家用操縦士

自家用操縦士の業務範囲については航空法(第28条)に以下のように記載されています。

自家用操縦士の業務範囲

航空機に乗り組んで、報酬を受けないで無償の運航を行う航空機の操縦を行うこと。

なんやら難しく書いてありますが、車で言うところの第1種免許になります。

車の第一種免許では仕事ができないように、ヘリコプターもこの「自家用操縦士」の技能証明では、仕事にしたりお金を取ることはできません。

報酬を受けない:業務に対しての給料等を貰わないこと。(ヘリの操縦に対する対価)
無償の運航:運賃、料金等を一切受け取らないこと。(チャーター料など)

プライベートでの移動手段や趣味としてヘリコプターを操縦することができます。

「東京ヘリポートまで送ってやるから1万円な」とかは、やっちゃいけないことになっていますので注意しましょうね。

プロのパイロットを目指す場合でも、一番最初はこの自家用操縦士の技能証明を取ることになります。

この先いくつもの試験を受けますが、この自家用操縦士の試験に合格した時が一番嬉しかったのを覚えています。

「これで俺もパイロットになれた」と思った瞬間でした。

ちなみに自家用操縦士の技能証明は17歳から取ることができるので、車より早く取れますよ。

事業用操縦士

事業用操縦士はヘリコプターの操縦を仕事にするためには必要な資格です。

事業用操縦士の業務範囲

航空機に乗り組んで次の行為を行うこと。

  • 自家用操縦士の資格を有するものが行うことのできる行為。
  • 報酬を受けて、無償の運航を行う航空機の操縦を行うこと。
  • 航空機使用事業の用に供する航空機の操縦を行うこと。
  • 機長以外の操縦者として航空運送事業の用に供する航空機の操縦を行うこと。
  • 機長として航空運送事業の用に供する航空機であって、構造上、1人の操縦者で操縦することのできるもの(特定の方法又は方式により飛行する場合に限りその操縦のために2人を要する航空機にあっては、当該特定の方法又は方式により飛行する航空機を除く。)の操縦を行うこと。

自家用操縦士の上位資格なので4つできることが増えています。

ヘリコプターのパイロットの場合はほとんどがこの資格で飛んでいます。

分かりやすいように一つずつ紐解いていきましょう。

①はそのままですね。事業操縦士でも趣味でヘリコプターを飛ばすことができます。やっている人は少ないと思いますが‥

②は少し分かりにくいかもしれません。

「給料はもらうけど無償の運航てどう言うこと?」私も最初はそう思いました。

これはヘリコプターで言えば、消防や警察など官公庁で飛ばすことを想定しています。

官公庁のヘリコプターは国や都道府県のお金で飛んでいます。まあ元は我々の税金ですが。

例えば山で遭難して警察のヘリが救助してくれたとしましょう。

救助された後で警察の人が「ヘリ飛ばしたから100万円になります」とは言ってきません。

運賃や料金を受け取っていないので「無償の運航」と言うことになります。

官公庁のヘリコプターパイロットは、②の業務範囲で飛んでいます。

③の「航空機使用事業」とはヘリで言うと、報道取材や航空測量、薬剤散布などが当たります。社内訓練以外の操縦訓練も航空機使用事業に当たります。

ヘリコプターの仕事はほとんどが航空機使用事業です。

民間のほとんどのヘリコプターパイロットは③の業務範囲で飛んでいます。

④には「航空運送事業」が出てきました。簡単に言うと人や物を運ぶことです。

ヘリではドクターヘリや遊覧飛行などがこれに当たります。皆さんが普段乗る旅客機も運送事業です。

最初に「機長以外の操縦者として」とありますが、これはどちらかといえば飛行機向けのものです。

旅客機の副操縦士は④の業務範囲で飛んでいます。

次の⑤を見ると「機長として航空運送事業の用に供する航空機であって、構造上、1人の操縦者で操縦することのできるもの」とあります。

ヘリコプターの場合はほとんどがこの「構造上、1人の操縦者で操縦することのできるもの」です。

なのでドクターヘリのパイロットは⑤の業務範囲で飛んでいます。

ちなみにエアラインの旅客機は構造上操縦するのに2人必要なので機長として飛ぶには次に説明する「定期運送用操縦士」が必要です。

事業用操縦士は18歳以上で取得可能です。

定期運送用操縦士

定期運送用操縦士の業務範囲

航空機に乗り組んで次の行為を行うこと

  • 事業操縦士の資格を有するものが行うことができる行為。
  • 機長として、航空運送事業の用に供する航空機であって、構造上、その操縦のために2人を要するものの操縦を行うこと。
  • 機長として、航空運送事業の用に供する航空機であって、特定の方法又は方式により飛行する場合に限りその操縦のために2人を要するもの(当該特定の方法又は方式により飛行する航空機に限る。)の操縦を行うこと。

事業用操縦士のさらに上位資格です。

エアラインの機長はこの資格で飛んでいます。

ヘリのパイロットでこの資格を持っている人はかなり少ないです。

そもそもヘリコプターで操縦に2人必要な機種が少ないです。

どの機種が2人必要かを判断する根拠としては「航空従事者技能証明の限定について」と言う航空局からの通達に記載があります。

ヘリコプターの等級限定

先述の通りパイロットのライセンスは航空機の種類によって違います。

しかしそれだけでは終わりません。

航空機にはそれぞれ「等級限定」があります。

等級限定には何段階かありこれらが組み合わさってできています。

具体的に見ていきましょう。

まずはその航空機の着陸する場所である「陸上」か「水上」か。

次はエンジンの数が「単発」か「多発」か。

そしてエンジンの種類が「ピストン」か「タービン」かです。

これらを組み合わせて等級限定が出来上がります。

この組み合わせはヘリコプターの場合、全部で8通りあります。

  • 陸上単発ピストン
  • 陸上多発ピストン
  • 陸上単発タービン
  • 陸上多発タービン
  • 水上単発ピストン
  • 水上多発ピストン
  • 水上単発タービン
  • 水上多発タービン

例えば陸上機でピストンエンジンが一つの機体であれば「陸上単発ピストン」が等級限定となります。

この資格の状態でタービンエンジンのヘリコプターに乗りたいとなると、またその機体で訓練をし、試験を受けて合格する必要があります。

全部取ろうと思ったらまあまあ大変そうです。

「多発ピストン」のヘリコプターなんてこの世に存在するのかは謎ですけどね。

大体のパイロットは最初の訓練は「陸上単発ピストン」の機体(一番安いから)でやり、その後に「陸上単発タービン」に限定変更して就職活動になるかと思います。

そして就職してから「陸上多発タービン」にさらに限定変更するという流れです。

ヘリコプターの型式限定

ヘリコプターは等級という限定事項があることは先述のとおりですが、これだけでは終わりません。

さらに「型式限定」というものがあります。

これは航空機の型式、簡単にいうと機種によって資格を限定しますよという意味です。

車の免許で大型を取ればどのメーカーのバスやトラックでも乗れますよね。しかしヘリコプターは違います。

ただし例外もあります。

全てのヘリコプターが型式限定になっているわけではありません。

この境界は何で決まっているかというと「重量」です。

ヘリコプターの最大離陸重量が3,175kg以下の機体は型式限定がありません。

イメージ的には、大きな機体は型式限定されています。

例えば「陸上多発タービン」の限定変更をEC135でやったとしましょう。

EC135は最大離陸重量が3,175kg以下なので型式限定ではなく等級限定です。

同じ「陸上多発タービン」で3,175kg以下のBell429やAW109であれば等級限定の範囲で乗ることができます。

しかし型式限定に指定されているAW139やAS365には乗ることはできません。

これらの機体に乗るためにはまた航空局の試験を受ける必要があります。

どの機体が型式限定されているかは航空局からの通達「航空従事者技能証明の限定について」に記載があります。

ヘリコプターに限らず航空機に乗るためには機体のシステムや特性を深く理解する必要があります。

いろんな機種を持っている民間の会社に入ると新しい仕事をするたびに限定変更の試験を受けるので結構大変ですね。

まとめ

同じ空を飛ぶ飛行機やヘリコプターでもライセンスは別々です。

業務範囲の違いもありました。

業務範囲の違い
  • 自家用操縦士
  • 事業用操縦士
  • 定期運送用操縦士

そしてヘリコプターには等級があり、陸上か水上、エンジンの数やエンジンの種類によって乗れる機体を限定しています。

ヘリコプターの等級限定
  • 陸上単発ピストン
  • 陸上多発ピストン
  • 陸上単発タービン
  • 陸上多発タービン
  • 水上単発ピストン
  • 水上多発ピストン
  • 水上単発タービン
  • 水上多発タービン

さらに最大離陸重量が3,175kg超の機体は型式ごとに限定されています。

このためパイロットという仕事はまさに死ぬまで勉強しなければならないのです。

毎回大変な思いをして試験を受けますが、合格したときは本当に嬉しいです。

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